ただのratt

僕のくだらない人生が、上手くいきますように。

愚かすぎるのに

 

 

 こんな時だから、僕はパソコンに向かって文字を打ってみた。

 こんな夜中だから、頭をシェイクして脳みそを鈍く回してみた。

 

 

 耳やら鼻やら、眠気と言葉が落ちてきた。大抵はひび割れた出来損ないが、掌の上で踊って互いに手を取って見せた。

 そうした優美な刹那に、眠気が靄をかけてまさしく夢のようであった。怪物が迫り、眼前に至ってようやく僕は目を覚ます。

 

 

 大学生とはえらいもので、九月いっぱいは夏休みらしい。有り余る時間を無駄にしているかもしれないという仮説を否定するように、僕は頭を振った。

 部屋全体を充足している音楽は、偶然にも僕の頭の動きに寄り添った。

 

 

 相変わらず僕にとってみれば、世界とはままならないものであった。どうもうまく回っているような地球の内部には、ことばにならない孤独感に苛まれた大勢が埋もれていることが分かった。

 そうであってもまた、僕は彼らに手を差し伸べることができなかった。僕もまた、その一人に過ぎないからだ。

 我々は仲良く、伝え聞くだけの空の色を妄想することしかできない、のだろうか。

 

 

 

 

 普段は青く、時には赤く、日によっては黒いらしい。空の色は心の色だと、我々は聞いている。

 

 

 僕は、隣の「孤独」に問うてみた。

「どんな気分だい。君の心が、空の色だよ」

「そうだな。ブルーな気分さ」

 

 

「そうかい。さぞいい気分なのだろうね。孤独が果てしなく幸福な瞬間だって、あるものだよね」

 そうして僕らはまた、土の茶色に眠った。

 

 

 私たちは、土くれの小さな亀裂の中を這って進み、辿り着いた場所にある物体の価値も分からない。

 彼が片腕を捧げたものに、僕は髪一本も惜しい気がする。逆もよくある。

 

 

 だからあの時の僕らは、躓いて、転んで、顔に泥を付けて、笑ったのだろう。

 そしてそんな日々に、心臓を置いてきたような気持ちがするのだろう。

 

 

 女神様はいつも微笑んでいるのに、そのことさえ知られれば傷つかないのに、僕はそれを拝むこともできない。

 あの時に置いてきた命が、そこに根付いて幸せそうに目を閉じてしまう限り。

 

 

 

 

 あの頃に置いてきた何かを探すために生きることなど、僕には到底できない。僕はどうにも、現在の僕のためにしか頭を働かせないようだ。

 誰かが未来の彼方へ放り投げた何かを、追いかけることもない。そんなことは愚かだと、僕には思われる。

 愚かしいことこそ人間なのだけど、どうせなら「私」に流された愚かがよい。過去にも未来にも、身体の断片を置いてきた観念としての愚かが、よい。